零からこぼれ落ちたもの
駆ける少女を、私は見ております。
砂利を蹴り、彼女は毎日やってきます。
私が体中いっぱい、太陽の日を浴びるとき。
彼女も、髪を日に透かせて輝きます。
私が体中いっぱい、雨粒を浴びたとき。
彼女は私に寄りかかり、空を見上げます。
彼女は私に寄りかかるとき、いろいろな話をします。
でも私が返事をすることはないのです。
黙って聞くだけが私の出来る唯一です。
暗くなると彼女は走って家へ帰ります。
だけどさみしいことはありません。
お日様が上がればまた駆けてきますから。
彼女は毎日やってくるのですから。
彼女はやがて来なくなりました。
私に静寂が戻りました。
思ったよりずっとずっと静かです。
思ったよりずっとずっとさみしいです。
それからずうっと経ってから。
彼女は、前触れも無く帰ってきたのでした。
大人になった彼女は太陽に透けて綺麗に。
きらきらとしておりました。
まるでおひさまの粉を浴びたようでした。
そして彼女はずっと私と一緒にいました。
こんどはお日様が沈んでも、ずっと。
そして彼女は、私に寄りかかって話をするのでした。
いろいろな、いろいろな話を。
……END